2003年兵庫リレーカーニバル 2003年4月19〜20日 ユニバー記念陸上競技場

雨模様のなか行われた兵庫リレーカーニバル。心配されたほど激しくなかったのは幸いでした。本当は、カラッと晴れてくれれば一番良いんですけど、この季節はどうしても不安定になっちゃいますね。
では、とりあえずはレースの行われた順に、ざっと感想を書いていくことにします。ただし、印象に残ったものだけになっちゃいますけど…。

■高校男子5000m
興味の中心は、高校生ながら5000m13分台、10000m28分台の記録を持つ西脇工の北村聡選手。どのくらいの記録で走ってくれるか?だったのですが、今月初めに10000m県高校記録を出したときにくらべると、さすがに本調子ではない様子。ゲストとして放送席に来ていた渡辺先生(西脇工監督)も、「今はそれほど期待できない」みたいな口ぶりでした。
ですが、いくら調子が良くなくても、それでもほかの選手とは実力がちがうんですよねー。スタート直後から先頭に立ってレースを引っぱり、レース中盤からは後続を引き離してあっさりと1人に…。渡辺先生によると「重そう」な走りらしいんですが、私にはそこまでわかるはずもなく…。ラストも、最後の力を振り絞って力走し、4分12秒台の大会新記録で圧勝しました。これは、またまた冬の駅伝が楽しみになってきましたねー。
ところでレース中、渡辺先生へ「今まで一番うれしかったことは?」という質問があったのですが、その答えは「藤原正和のびわ湖と山口衛里の五輪代表」でした。高校駅伝で優勝するのもいいけど、やはり、その後に世界に羽ばたくランナーになってくれるほうが、よりうれしいものなんだなーと改めて感じました。西脇工出身の有力ランナーはまだたくさんいるし、そのなかで1人でも多く渡辺先生を喜ばせるような選手になってくれたらなーと思ったのでした。

■グランプリ男子3000m障害
もう20年以上も日本記録が更新されていないこの種目。数年前は日本新も期待できた内富選手は少々ピークを過ぎた感じで、今は岩水嘉孝選手1人が気を吐いています。今回のレースでも最初から先頭に出た岩水選手に対し、内富選手以下はついていくのが精一杯という感じ。4分を過ぎるころには、岩水選手だけになってしまいます。結局そのまま少しずつ差を広げてゴール。記録は8分36秒64と、「並」のレベルで終わってしまいました(まあ、シーズン序盤だし、本番はこれからなんですけど)。
ちなみに世界陸上に出るには、まずは8分30秒30のB標準を突破しなければなりません。が、出るだけでなく勝負に参加するには、やはり常にA標準(8分24秒60)を切るくらいの力は必要でしょう。潜在能力の高い岩水選手には、ぜひともA標準突破を期待したいのですが…。そして、近いうちにぜひ8分19秒52の日本記録を破ってほしいですねー。

■グランプリ女子10000m
この種目の始まるあたりから雨が激しくなってきて、テレビ画面でも気になるくらいでした。湿度が高くて、かなり蒸す感じだったそうです。記録は期待できないかなーと思ってたら、案のじょうレースは序盤からスローペースに。先頭にはエスタ・ワンジロ選手などが立ちますが、ペースはいっこうに上がりません。途中からは弘山選手が先頭に出るも、やはり展開は変わらず。10人以上が先頭集団を形勢したままで進みます。ラップタイムは1週78〜79秒と、ここで完全に記録への期待は消えました。
後半は小崎まり選手がトップに立ちますが、トップ集団の人数にはあまり変化なし。ただ、弘山選手は集団の後方に下がってしまいます。最後の1周で、スピードに勝る小鳥田貴子選手と市川良子選手が小崎選手を逆転。最後の直線あたりで市川選手が前に出て、圧倒的なスピードを見せつけ優勝を飾りました。
さすが、1500、5000から距離を伸ばしてきた選手だけに、スピードがちがいますね。マラソンにはあまり適性がないみたいなので(何度か挑戦したけど成功はしていません)、このままトラックでがんばってくれたらなーと思います。今回はずっとスローペースだったんで余力も残ってましたけど、ハイペースで進んでもこのくらいのスパートがきくようになれば、世界陸上とかに出ても希望が持てると思います。
あ、世界陸上代表の坂本直子選手の欠場は残念でした。1月のマラソンの疲れがとれきってないとか。次のレースを待ちたいですね。

■グランプリ男子10000m
例によって例のごとく、序盤から外国人選手が先頭集団を形勢。日本選手はほとんどがついていけず、選手は二つの大きな集団に分かれます。先頭集団に入って、ついていけた日本人は松宮隆行選手、浜野健選手の2人だけ。松宮選手は6番前後、浜野選手は10数人の集団の一番後方につけます。
ただ、先頭集団のペースは、速いのは速いけどつくのが不可能なペースではなかったんですよね。だから、ほかの日本人選手があっさりと脱落していくのを見ると、「なんだかなー」って感じもしました。中国電力のマラソン代表3人とか、旭化成の小島(弟)選手、カネボウの入船選手、日清食品の徳本選手などなど、有力選手勢揃いなんですから。ちなみに、高校2年になったばかりのジョン・カリウキ選手(滋賀学園)は、レース終盤までトップ集団にいました。いくら外国人とはいえ、高校生なんだから、日本の選手だってもうちょっと意地を見せてほしかったです。
さてさて、あっというまにレースは中盤。トップ集団は徐々に減っていき、10人程度でいったん落ち着きます。このあたりで松宮選手が一瞬ですがトップに立ち、外国人選手に「ついていくだけ」の日本人を見慣れている私はちょっとびっくり。第2集団は、故障から復帰してまだ間がない旭化成の高尾選手が前に出て、復活ぶりを印象づけてくれましたが、全盛時の力にはまだ及ばないようで、すぐに後退。かわってその集団のトップに立ったのは、「微笑み走法」の佐藤選手で、小島選手や入船選手もその付近にいたのですが、だれもはるか前のトップ集団を追おうとする気はない様子。果敢に走る松宮選手にくらべて、歯がゆいなーって感じがしました。
そしてレース終盤。先頭集団もこのあたりから徐々に少なくなっていきました。がんばっていた浜野選手も、ここで後退。そして、ずっと6番あたりにつけていた松宮選手も、ついに遅れ始めます。「ここまでか…」と思いました。ですが、松宮選手が凄かったのはここからでした。がまんしてこれ以上差をあけられないようについていき、トップがスピードを落としたときにじりじり追い上げ…そしてついに、再び集団に追いついたのです。しかもそれだけではありません。なんと、そのまま順位を上げていき、ついには先頭に立ってしまったのです! ここで私は、またもやびっくり。さすが30kmの世界最高保持者…!とその実力を再確認しました。
けれど、さすがにそのまま最後までは行けませんでしたね。残り2周の時点で松宮選手は3位に落ち、2位との間隔はだんだん広がっていきます。優勝争いは、スズキのマサシ選手を、最後の直線でアラコのマイナ選手がかわしてゴール。松宮選手は27分50秒ちょいで3位となりました。ちなみに世界陸上のA標準記録は27分49秒00で、これにはわずか2秒足りず。ものすごく惜しかったです。
こういうわけで、松宮選手と浜野選手はがんばったと思うのですが、あとの選手がなーという感じです。ここに書いた以外にも何人かに注目していたんですが、みんなほとんどテレビに映らなかったですからねー。映ったかと思えば、先頭の選手に1周抜かれる場面だったりして、ちょっと悲しくなりました。まあ、まだシーズンは始まったばかりだし、これからに期待したいと思います。
でも、松宮選手は素直に凄い!と讃えたいです。あの、積極果敢に先頭に出る走りには、感心しました。次はA標準は切ってほしいなあ…。

■グランプリ女子砲丸投
これは、テレビでは見られなかったのですが(放送はトラック競技中心なので)、森千夏選手が17m53の日本新で優勝しました。森選手は昨年11月にも17m39の日本記録を作っていて、今回はそれを自ら更新。まだまだ世界との差が大きい種目ですが、こうやって少しずつでも差をつめていってくれたら…と思います。

最後に、女子800mの杉森美保選手が棄権してしまったのは残念でした。冬に室内で何度も日本新を出してたから、屋外の第一戦でどれくらいやってくれるか…と思ってたんですけどねー。

【事前のみどころ】
20日は、兵庫リレーカーニバルが行われます。毎年、特に男女の10000mはトップ選手が出場するこの大会。昨年、一昨年と連続で見に行っていたのですが、今年は観戦の友・あきべ嬢に先約があったため、生観戦は断念。日曜は一日、自宅でテレビ観戦することになりそうです(あの大会だけは、1人で見に行く勇気はありません…)。
注目の10000mですが、男子は世界陸上マラソン代表が顔を並べました。尾形剛選手、油谷繁選手、佐藤敦之選手の中国電力勢で、3人のスピード対決は見物です。それ以外にも、30kmの世界最高を出した松宮隆行選手に、1500mからハーフまでこなす徳本一善選手。あと、一般参加でも有力選手はきっと、いっぱいいると思います。世界陸上の代表がここで即決定するわけではありませんが、選考レースのひとつになってるし、かなり楽しみです。
女子のほうは、弘山選手、小鳥田選手、小崎選手、川島亜希子選手など、よく見る顔ぶれが揃いました。また、こちらのマラソン代表組はも松岡理恵選手と坂本直子選手。注目は坂本選手のほうで、大阪で21分台の驚異的な記録で走ったにもかかわらず、なんと10000のベストは34分19秒という、とんでもなく遅いタイムなんですよね。つまりは昨年のトラックシーズンから冬のマラソンまでに、急激に伸びたということで…。そうなると10000のタイムはどのくらい縮められるでしょうか? 興味津々…といったところかな。
もちろん、それ以外にも有力選手は目白押し。男子3000m障害の岩水選手、内富選手、女子800mで室内日本新を連発した杉森選手…などなど。とりあえず春先にどのくらいのスタートを切れるのか、注目したいところです。

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