2004年びわ湖毎日マラソン 2004年3月7日 皇子山陸上競技場発着

泣いても笑ってもこれが最後の選考会。マラソン男子の五輪代表を決める、びわ湖毎日マラソンが行われ、小島忠幸選手が日本人トップの2位でゴール。有力候補に名乗りをあげました。小島選手とともに「有力」と見られていた佐藤敦之選手は4位で、代表には手が届きませんでした。
レースは雪が舞うなかで始まりました。3月にしてはおそろしく寒く、どんなレースになるのか不安が募ります。それでもペースメーカーの存在はありがたいもので、こんな状況でも安定したハイペースをキープ。トップは大集団を形成し、そこからこぼれ落ちる有力選手はほとんど見られません。そのままレースは中間点を過ぎて…そしていよいよ、ペースメーカーがお役ご免となる、30km地点がやってきたのです。
果たしてだれが仕掛けるのか…。もしかしたらだれも前に出たがらないのでは? こんな予想は、あっさりと覆されました。どちらかといえばダークホース的な存在だった渡辺真一選手が、ぐんとスピードを上げたのです。大集団は、みるみるうちに縦長になっていきました。小島忠幸選手が反応の良いところを見せて、渡辺選手のすぐうしろにつき、佐藤選手もそれに続きます。
ですが、この状態も長くは続きませんでした。今度は佐藤選手がトップに立ち、積極的にレースを引っぱりはじめたのです。五輪代表の有力候補…と思われた佐藤選手が、この時点で前に出るのは、少し早いんじゃないかと思いました。さっきの渡辺選手のスパートで、多少人数は減っていましたが、それでも集団にまだ10人ほどはいたからです。小島選手のほうは、ここでも二番手の位置をキープ。だれがスパートしてもすぐに反応できる位置どりで、このへんにも調子の良さが感じ取れました。
そして、さらにレースは動きます。今度は、それまでは集団の中ほどにつけていた松宮祐行選手がスパートしたのです。30kmまで続いていた淡々とした流れは、一気に激しいスパート合戦へと様変わりしていました。さすがにこうなると、ついていけない選手が続出。最初に仕掛けた渡辺選手、2年前の優勝者・武井隆次選手、いい走りを見せていた高橋健介選手らが、集団から脱落していきました。
そして、ほどなく松宮選手はうしろに下がり、かわって今度はケニアのオンサレ選手が前へ。次々に引っぱる選手が交代する、めまぐるしい展開でしたが、そんななかでも小島忠幸選手は相変わらずトップの次をキープしていました。もちろん、佐藤選手もすぐ後方につけています。
このあたりで、粘っていた小島宗幸選手(忠幸選手の兄)と、一度は先頭に立った松宮選手が集団の最後方に下がりました。35km地点がやってきたとき、トップ集団にいるのは小島忠幸選手、佐藤選手、オンサレ選手、スペインのリオス選手、そして一般参加ながら健闘を見せている高塚和利選手と、最後方に下がった松宮選手、小島宗幸選手…。30km地点からわずか5kmで、ここまで絞られてきていました。
そして、ここで先頭に立ったのがリオス選手でした。彼は何度も何度もうしろを確認してから、徐々にスピードを上げていきます。ひとかたまりだった選手が、縦一列に並びました。小島宗幸選手はこのあたりで一気に遅れていき、高塚選手、松宮選手も苦しくなっていきます。残るは4人。けれど、リオス選手はゆるめませんでした。ここからさらに速度を増していったのです。
ついに、佐藤選手が遅れはじめました。冬のロードレースであれほど好調さを見せつけていた佐藤選手も、42.195kmを走るマラソンでは、ここまでだったのでしょうか。スタミナが切れるとしたら小島選手のほうが先だと思っていた私には、少々予想外のことでした。
小島選手は、この時点でもリオス選手のうしろにつけています。佐藤選手は必死の形相で小島選手の背中をにらみますが、2人の距離は開いていくばかりです。
ただ、どちらかといえば小島選手を応援していた私なのですが、実はこうなってもまだ安心できる状況ではありませんでした。なぜなら小島選手の場合、一度ガス欠を起こすとあっというまに遙か彼方に消え去ってしまう…という、悪いクセがあったからです。逆に佐藤選手のほうは、一度遅れてもそう極端に離されることはありません。勝負はまだまだわかりませんでした。
レースは38kmを過ぎ、このあたりで小島選手の顔に、疲労の色が目立ってきました。前のリオス選手につくのに、精一杯といった感じです。もう、リオス選手を抑えて優勝するとは思えなくなりました。そして危惧したとおり、39km付近で小島選手はじりじりと離されていきます。優勝は消えました。小島選手にとっては、あとは「ゴールまでどれだけ持ちこたえられるか」でした。
けれど、心配された「大きな落ち込み」は、最後まで見ることはありませんでした。佐藤選手につけた20秒の差を、最後までほぼ保って小島選手はゴールしました。これまで何度も小島選手のマラソンを見てきましたが、まぎれもなく今回が、順位もタイムも内容も、一番良いレースでした。
優勝したリオス選手は2時間7分42秒、2位の小島選手は2時間8分18秒、4位の佐藤敦之選手は2時間8分36秒。佐藤選手のアテネマラソン代表は消えました。そして小島選手は…かなり微妙な位置のようです。
選考レースで優勝したのは、国近選手のみ。残りの候補者は、だれも決定的な結果が出せていません。今回の小島選手も、「日本人1位」という条件は満たしたものの、優勝はできませんでした。私としては、途中で一度もレースを引っぱらなかったのも、少々不満が残るところです。
果たして、3枚の切符はだれの手に渡るでしょうか。決まるのは、3月15日です。

【事前のみどころ】
7日には、男子マラソンの五輪代表を決める最後のレース、びわ湖毎日マラソンが行われます。ここには、佐藤敦之選手、小島忠幸選手、武井隆次選手らが参加。当初参加すると見られていた高岡選手、油谷選手、藤田選手、藤原選手などが次々に回避または断念して、ちょっとばかし気が抜けてしまった感はありますが…(主に出なくなった選手のほうに、私が注目していたから…なんですけど)。それでも、このレースが終わればすべてが決まる、ということで、注目度はかなり高い大会ではあります。
NHKのサタデースポーツで、前記の3選手のインタビューが流れてましたけど、正直、あれだけじゃわかんないですね。だれが一番調子がいいんでしょう?
私としては、やはり西脇工出身の小島(「おじま」です。「こじま」じゃありません)選手にがんばってほしいところですが…。前回の福岡では、これまでの悪いクセだった後半の落ち込みが、かなり改善されていたようだったので、今度こそ最後まで持ちこたえてくれればなーと思います。
ただ、実際に勝つ可能性は…佐藤選手のほうがあるかなぁ…。どの大会でもそこそこの順位で走ってて、安定感が感じられるし、最近の駅伝レースでもかなり好調のようでしたから。
武井選手は、どうもアジア大会の良くない走りのイメージが抜けないですね。もちろん、あれから2年も経ってるんだし、今回は調整も進んでいるようですけどね。
それと、ひとつ書くのを忘れてました。何日か前のニュースで、福岡で勝った国近選手が、アキレス腱を傷めていた…というのがあったんですけど、こちらのほうも気にかかります。すでに練習は再開しているようですけど。

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