2008年全日本選手権 2008年12月25日〜27日

実は、今回の全日本は、観戦するかどうかちょっと迷ったんですよね。目当ての1人・高橋大輔選手は出られないし、安くない交通費と宿泊費をかけて行く意味はあるのか…と。でも、自問自答したのは一瞬で、結局すぐにチケットとっちゃったんですけど。今季急成長の小塚崇彦選手とか、復活を果たした鈴木明子選手とか、ほかにも見たい選手がいっぱいいるし、なんつーても全日本は、世界的にもハイレベルな、ものすごい真剣勝負が見られる場ですからねー。スケートファンとしては、やはり見逃せない試合なのでした。すでに観戦から20日以上たって、記憶も薄らぎつつあるのですが、なんとか思い出しつつ感想を書くことにします。

■男子シングル

織田信成
小塚崇彦
無良崇人
高橋選手の欠場で、優勝争いが混沌としてきたこの種目。今季、スケートアメリカで優勝、グランプリファイナルでも2位に入って、一気に世界トップレベルへ上がってきた小塚崇彦選手と、1年の謹慎を経て復活し、NHK杯で見事優勝を果たした織田信成選手の一騎打ちとなりました。
結果からいうと、ミスの数が勝敗を決めた感じです。織田選手はショートプログラムでノーミス、フリーでは4回転を転倒したのみで、高得点をたたき出し、予想以上の差をつけて初の全日本タイトルを獲得しました。
織田選手といえば、これまではジャンプのやわらかい着氷と、巧みなスピンが持ち味で、スケーティングやステップ、表現はイマイチだったのですが、特にショートではその部分がかなり改善されているように見えました。かなり音楽に合わせて動けるようになっていたのは驚きです。半年ほど前は、ただ単に身体を上下に動かしているだけだったのに、今回はよかったと思いましたねー。
だだ、フリーまでは手が回らなかったのか、ショートに比べると、技をこなしているだけに感じました。タイトルがかかっていたからか、ていねいに滑ってはいたんですが、スピードもなかったし、見ていて引き込まれる部分が少なかったですね。冒頭の4回転ジャンプで失敗したのも残念でした。練習では4−3のコンビネーションをきれいに決めていたので、行けるかな?と思ったんですけどね。試合で降りるのがいかに難しいか、実感させられました。
小塚選手は、今季は失敗がかなり少なくなっていたので、ショートはノーミスを期待したのですが…。出だしのコンビネーションジャンプの失敗が、最後の最後まで響きました。3ルッツできちんと着氷できず、3トウループはつけられないまま。急遽、次の3フリップ(本来ならステップからの単独3回転)をコンビネーションに変えてきましたが、これだけで約10点もの差がついてしまいました。この時点で、勝負は8割方決まりましたね。
小塚選手はフリーでもミスが出て、結局織田選手を上回ることはできませんでした。冒頭の4回転の転倒はともかく、後半の3アクセルでも失敗したのは残念でした。
ただ、このときの小塚選手からは、なにかものすごく伝わってくるものがありました。これまでは、スケーティングはうまくても、あんまり「表現する」ということはなかったと思うのですが、その壁を破ったというか乗り越えたというか、一段階ステップを上ったような感じがしましたね。もともと基礎技術はずば抜けて高いものを持っているだけに、今後がさらに楽しみになりました。
でも、やっぱり小塚選手のミスは残念でした。2人ともノーミスだったら、どちらが上に行くか、かなり興味があったんですよねー。この勝負は世界選手権に持ち越し、ってことになるのかな。楽しみです。
世界選手権といえば、もう1人の代表の無良崇人選手。今季、ジュニアから上がったばかりなのですが、こちらも見違えるくらいうまくなってました。以前は、技術的にはそこそこのものはあったんですけど、あんまりアピールポイントがないというか、見ていておもしろみがないというか…。正直、好みの選手ではなかったのですが、それはまあ、私に見る目がなかったんでしょうねー。ジャンプが安定してきたし、全体に一段と迫力が増してました。まだ荒さはありますけど、これからどこまで伸びるか、こちらもとても楽しみです。

■女子シングル

浅田真央
村主章枝
安藤美姫
荒川静香さんが引退してしまってから、正直、少し興味が薄らいでいた女子ですが、鈴木明子選手の存在もあって、私の中で復活の気配?です。鈴木選手は、昔から見てはいたんですが、以前はそれほど気にかかる選手ではなかったんですよね。それが、3年くらい前(復活したころ)から、いい演技をするなーと思うようになってきて、昨シーズンの全日本あたりからは、滑りの美しさにうっとりするようになって、今季のブレークに至る…というわけなのでした。
そんな感じで、私にとって女子の一番のお目当ては彼女だったわけですが、それでも会場での人気の高さには驚かされました。とにかく演技前から声援がすごい。もちろん「がんばれ!」っていうのは多いんですが、どっちかというと「どんな演技を見せてくれるんだろう」という期待がこもった声援に思えました。でもって、フリーではまさにそれに応える、すばらしい演技を見せてくれたもんだから、もう会場中が熱狂してましたね。
鈴木選手は、ちょっとした手や足の動きにも、音楽を感じられるところがいいんですよね。今回はショートで失敗したのと、フリーでいくつかジャンプの回転不足をとられたのもあって、惜しくも世界選手権の代表は逃しましたが、四大陸選手権には出られるし、ぜひともあの演技でカナダの観客を魅了してほしいです。
あとは、勝負のいろんなおもしろさを見られた大会でもありました。一番驚いたのは、村主章枝選手の復活でしょうか。昨季まではジャンプがどんどん跳べなくなっていくばかりで、正直もうだめだろう…と思っていたのですが、今季は序盤のグランプリシリーズからいい感じ。そして、年末の大一番でまさに本領を発揮してくれました。ジャンプがほとんど決まったし、それになによりスピード感あふれる滑りがまた見られたのがうれしかったです。全盛期の姿が甦りましたね。それにしても、フリー1位、総合2位には驚きました。
それから、安藤美姫選手と中野友加里選手それぞれのドラマ(といってしまっては失礼かもしれませんが)にも、いろんなものが凝縮されているような気がして、考えさせられるところが多かったです。ショートはともに好調で、中野選手はノーミスで1位、安藤選手もジャンプの回転不足で点数自体は若干低かったんですけど、すばらしい演技で3位。だから、フリーでも当然2人には期待していたのですが、安藤選手は直前練習で足を負傷し、不安定な演技に。中野選手はショート首位のプレッシャーからか、予想外の大崩れで、総合5位と残念な結果になってしまいました。
安藤選手はまだ世界選手権で巻き返せるチャンスがあるのですが、中野選手の今季が、これで事実上終わってしまったのは残念です。年々すごくうまくなっていて、今季は全日本初制覇のチャンスもあっただけに、このフリーの失敗が惜しまれます。来シーズンに期待したいですね。
最後になりましたが、優勝は大方の予想どおり浅田真央選手でした。この2年ほどで、身体が大きく使えるようになりましたね。ただ、3回転半は観客席で見ていても回転不足がわかったので、そのへんを世界選手権できっちり修正してくれればと思います。今季は特に回転不足が厳しくとられるようになって、この大会でも浅田選手だけでなく、中野選手、鈴木選手、安藤選手など、軒並みダウングレードをくらい、得点がかなり伸び悩んでいました。成長期の浅田選手は特に大変だと思いますが、がんばって克服してってほしいですね。

■ペア

高橋成美/マーヴィン・トラン
ものすごく久しぶりに、全日本選手権でペアを見ることができました。国際大会ではジュニアの2人ですが、国内選手権はシニアに出場。まだ弱々しい感じはするし、完成度もそんなに高くなかったのですが、とにかく今後への期待感のほうが大きかったです。うまく伸びてくれることを願います。

■アイスダンス

キャシー・リード/クリス・リード
杉木奈々/水谷太洋
平井絵己/湯澤綾人
アイスダンスも、今回は3組が出場。複数のエントリーがあるって、本当にいいものだと思いました。
特に、平井/湯澤組の平井選手が、本格的にアイスダンスへ転向したのにはびっくり。パートナーの湯澤選手は、わざわざ関西へ拠点を移して取り組んでいるそうです。
演技の出来に関しては、やはりキャリアの差は歴然としていて、リード姉弟組はダントツだったし、杉木/水谷組との差もかなり感じました。正直、2人で組んで滑るのがやっと…という感じはしましたから。
それでも、こういうカップルがあと少し誕生してくれれば、日本のアイスダンスも層が厚くなって、底上げが図れるんじゃないかなーと、将来へ期待を抱いたのでした。

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