■男子シングル
【フリー順位】
1 本田武史 2 田村岳斗 3 中庭健介 4 高橋大輔 5 柴田 嶺
6 織田信成 7 神崎範之 8 岩本英嗣 9 小林宏一 10 田中総司
【総合順位】
1 本田武史 2 田村岳斗 3 中庭健介 4 高橋大輔 5 柴田 嶺
6 織田信成 7 岩本英嗣 8 小林宏一 9 神崎範之 10 田中総司
【個々の選手について】
・田村岳斗
最終組の一番目に登場したのが田村選手。ショートは3位、2枚しかない…というよりは、実質残りの1枚の世界選手権代表切符を高橋選手と争っていて、ここはなんとしても負けられない状況でした。
出だしに連続して入る4回転は、なんとか二つとも降りました。ただ、お世辞にもクリーンとは言いがたく、続く3回転半もやはり失敗、サルコウは2回転に…と、すっきりしない出来となってしまいました。
とにかくすべてが危なっかしいんです。それはどうしても、彼のレベルを低く見せてしまうことになるんですよね。ショートではプレゼンの面でも進歩したと思ったのに、それもフリーの長丁場になると、なんとなーく間延びした感じだし…。
4回転が入ったことで点数はそこそこ出ましたが、今のままでは世界に出ても結果は見えてます。もうちょっと、演技の精度を高めてほしいです。
・柴田 嶺
昨日、いきなり「注目株」になった柴田選手ですが、今日のフリーもかなり期待通りの演技を見せてくれました。持ち味の表現力は、長いプログラムになっても健在。ビールマンスピンなんかも見せてくれて、身体の柔らかさをアピールしてましたねー。男子でビールマンをやっても不自然にならないところがスゴイ。
ジャンプも、ルッツからのコンビネーションをはじめ、3回転はかなりきれいに決まってました。ただ、やはり3アクセルは苦手なのか、チャレンジはしたものの失敗。4回転はともかく、まずは3回転半をきちんと跳べるようにすることが課題でしょう。とにかく、このまま伸びていってくれれば…と思います。次が楽しみなのにはちがいないですね。
・高橋大輔
前日のショートでは2位につけ、世代交代なるか…と思わせてくれた高橋選手でしたが…。
4回転の転倒は仕方ないとして、続く3回転半も失敗。再度チャレンジするもまたも降りられず、で、結局3回転半以上のジャンプはひとつも入らないまま、演技を終えることになりました。さすがにその内容では、高得点は望むべくもありません。ほとんどのジャッジに、田村選手より低い点をつけられてしまいました。
彼の場合、難度の高いジャンプは3回転半だけ。4回転は決まらないし…。そのジャンプがだめだった場合、別のなにかでカバーできるような力は、まだないと感じました。今は力不足、かな。もう少し待てば…とは思いますね。
・中庭健介
田村、高橋両選手とも出来はイマイチで、ショート4位の中庭選手にも俄然チャンスが出てきました。そして、出だしの4回転をものすごくクリーンに決め、中庭選手から思わずガッツポーズが出ます。続くルッツからの3−3のコンビネーションは、セカンドジャンプで惜しくもステップアウト。このあたりまではまだ彼にも可能性があったのですが、続く3回転半の失敗で苦しくなり、結局それから最後まで大技を入れることはできませんでした。
ジャッジの評価は3位。アクセルを決めていれば一気に中庭選手に傾いたでしょうに、もったいなかったです。
ただ、最初の4回転、本当にものすごくきれいだったんですよね。あれを毎回決めることができれば、今後評価は上がってくると思うのです。大化けする可能性は秘めてるんじゃないでしょうか?
・本田武史
正直、優勝は「滑る前から決まってる」本田選手。私が彼に求めていたのは、いかにミスなく滑ってくれるか、でした。
さて、NHK杯後に「プログラムを変えろ」と言われたとかで、いったいどうするんだろう…と思っていたのですが…。でもって、本番前の6分間練習で、ジャージを脱いだ本田選手を見たとき、当たり前ですが「ゾンビじゃなくなってる〜」。あのトイレットペーパーを巻きつけたような衣装は、あまりに強烈でしたからねー。正直、やめてくれてよかったかも。
しかし、今回はNHK杯から1か月足らずなわけで、急遽プログラムを作り直したとしても滑り込みとかできてるんかなーと、期待半分、不安半分で演技開始を待っておりました。
ところで、プログラム変わる…ってことは、ジャンプの順番も変わるってことだったんですね。いつもはフリップから入るのに、今回はいきなり4回転トウループからで、ちょっと面食らいました。そして転倒…。一瞬、「やっぱりアカンかったかぁ〜」と悲観的になってしまった私。ですが、すぐに「4サルコウがある」と気持ちを切り換え(私が切り換えても、なんにもならないんですけど)、次を待つことにしました。ところが、そのサルコウは3回転になってしまって、また落としたか〜とがっくり。ここのところ調子を落としていた3回転半はなんとか決めましたが、3.5−3のはずが二つ目のジャンプは2回転。そして、再度挑戦した4回転トウループはまたしても3回転になり、結局4回転は一度も入らずじまいだったのでした。NHK杯では三度目の正直、で決めてくれたから、期待してたんですけどねー。
ただ、このプログラムの見せ所は、ステップにありました。ストレートラインステップシークエンスは、あのヤグディンばりのトウステップで、もう魅せる魅せる! そこからコンビネーションスピン、そしてフィニッシュ…となるところは、本田選手の独壇場って感じでした。4回転が入ろうが入るまいが、やはり全日本では実力が違うんですよね。もちろん、世界ではそういうわけにいかないので、とりあえずはもう少しこのプログラムを滑り込んで、そしてもう一度見せてほしいですね。
→写真集その1

■女子シングル
【フリー順位】
1 村主章枝 2 荒川静香 3 恩田美栄 4 太田由希奈 5 中野友加里
6 安藤美姫 7 浅田真央 8 浅田 舞 9 鈴木明子 10 鍵田祐子
【総合順位】
1 村主章枝 2 恩田美栄 3 荒川静香 4 太田由希奈 5 安藤美姫
6 中野友加里 7 浅田真央 8 浅田 舞 9 鈴木明子 10 竹内理恵
【全体の感想】
とにかくいえるのは、「全日本史上、まれに見る高レベルの戦い」だったということです。ジュニアがすごい…っていうのは聞いてたし、興味の半分はそこにあったんですけど、まさかあれほどとは…! シニアの選手は、トップ3を除いてのきなみ撃沈…って感じでしたね。でも、上の3人は、やはり貫禄勝ちかなー。なにはともあれ、見応え充分な女子シングルでした。
【個々の選手について】
・浅田 舞
第3グループの最初に登場したのが、浅田姉妹の姉、舞選手。出だしからトリプルアクセルに挑戦して、場内を沸かせてくれます。ただ、着氷が乱れて成功はならず。3ルッツ−3ループのコンビネーションも、セカンドジャンプが両足着氷。全体にもう少しランディングがきれいになれば、もっと見栄えがするのに…と思いました。でも、ルッツは2回決めてたし、なかなかの演技でした。とにかく、難しいジャンプに挑戦していく姿勢がいいですねー。
・浅田真央
6分間の練習から高難度の技を連発してくれて、かなり注目を浴びていた浅田真央選手。プログラムの最初のジャンプは、やはり3回転半です。練習のときはけっこう転んだりしてたんですけど、本番では見事に降りてくれて、場内からは大きな歓声が…! ちょっと回転は不足してたかなーと思ったけど(あとでテレビ中継を見てみると、やっぱりそうでしたが)、それでも12歳の選手がトリプルアクセルですよー。これはやっぱ、すごいって思いましたよね。
そして、続くジャンプは、3フリップ−3ループ−3トウループのコンビネーション。このときの観客の反応がまたすごかったんです。最初のフリップでは拍手、次のループでは歓声、そして最後のトウループでは驚愕の声。パチパチ→わーっ→うおぉ〜っ!って感じですよ。セカンドジャンプが3回転のループだったら、やっぱり観客の反応がいいんですよね。見た目だけでも難しいのがわかるし。だから、練習でもけっこう客席は沸いてたんですけど、でもその上にトウループがつくと、もう「信じられない!」としか言いようがないんです。さすがに、三つ目のトウループは、半分以上回転が足りてませんでしたけど、これは仕方ないでしょう。
しかも、その次のコンビネーションも、3ルッツ−3ループの組み合わせ。そして成功。あまりに凄い技の連続に、会場全体が大興奮。そのあとも1回だけサルコウでふらついたぐらいで、ほとんど完璧な出来で、最高に盛り上がりました。思わず私は、カルガリー五輪の伊藤さんを見た観客たちって、こんな状態だったのかなーなんて、考えてしまいました(そういえば衣装も、以前伊藤さんが着てたものだったよーな。きっと、伊藤さんからもらったんでしょうねー)。
浅田真央選手は、スケートファンの間ではけっこう有名だったし、注目もしてたけど、それでも実際見てみるとやっぱ凄かったです。久々に、エキサイトさせてくれるスケーターが現れた、って感じですね。
・荒川静香
第3グループ最後は、このフリーにすべてがかかる荒川選手。ショートの順位からみて、いい演技さえすれば表彰台の可能性があると見てました。とにかく、前日みたいなガチガチの状態じゃどうしようもない。グランプリのロシア杯のときは、「ショートで失敗して、フリーは開き直って滑ったら、いい演技ができた」そうなので、今回もそういう気持ちで臨んでくれれば…と思っていました。
滑り出してまず感じたのは、スピードがある、ということ。これは行けるのでは…と思いました。その通り、3ルッツ−2トウループのコンビネーションは成功、続く3サルコウ−3ループも成功。ステップに切れもあったし、失敗といえば二度目のルッツがダブルになったことくらい。NHK杯では最後にちょっとガタガタってなっちゃいましたけど、今回はトウループのコンビネーションもダブルアクセルも全部決まって、最高!と言っていいくらいの出来で演技を終えました。
なんといっても、彼女の今年のプログラムはドラマチックですよねー。それをちゃんと表現できる技術も持ち合わせてるし。得点も、5.6〜7がずらりと並びました。最終組だったら5.8も出てたでしょうにねー。でも、この演技で、ますますおもしろくなりそうな予感がしました。
・鈴木明子
最終グループの一番目は、ショート6位の鈴木選手。踊れる人だとは思うんですが、いかんせん、ほかの選手がすごすぎて、もうひとつ目立たないんですよね。直前の組で、観客を真央ちゃんが沸かせ、荒川選手が魅了し…ってのを見てるからよけいかな。得点のほうも5.1〜2と、あまり伸びず…という感じでした。
・安藤美姫
お次は安藤美姫選手。練習では目の前できれいな4回転を披露してくれました。本番でも、2回転半に続いて3ルッツ−3ループを決め、4回転への期待は高まります。ですが、これは惜しくも転倒。ジュニアグランプリファイナルの再現はなりませんでした。
そのあとは、そこそこジャンプは決めていたのですが(ループでつまずいたぐらいかな?)、なぜだろう、印象が薄いんですよ。彼女の場合、まだまだ技術先行でプレゼンは低い…のは最初からわかってるんですが、技術のほうも4回転を失敗しちゃうと、イマイチピンとこないんです。
正直、浅田真央選手を先に見てるじゃないですか? 安藤選手には、それ以上のものを無意識に求めてたと思うんですね。それが、特に興奮させられることもなく、あっさりと終わってしまいました。
やはり彼女の場合、ジャンプの比重がかなり大きくて、表現力というと「うーん」って感じになってしまうんですよね。まだまだ、プログラムで見せられるところまで行ってない。そのへんが、これからの課題なんでしょうねー。まあ、若い選手だし、そんなに早く完成させなくてもいいのかもしれません。
得点のほうも伸びず、フリーはこの時点で荒川選手に次いで2位。総合ではトップに立ちましたが、2人の得点差からみて順位はそのうち入れ替わるだろうなーと思われました。
・中野友加里
次の中野友加里選手、見せ場はやはり3回転半。最初から果敢に挑んだものの、大きく転倒してしまいます。でも、彼女のことだから絶対2回目も挑戦してくるはずだと思ってたら…やってくれました。しかも、コンビネーションで! なんというか、その「心意気」がいいですよねー。失敗してもチャレンジして、そしてついには成功させてしまう…。すごいです。ただ、途中のコンビネーションで3−3を入れてきたものの、惜しくも両足着氷。全体に粗さがが目立ってしまったのがつらいところです。これからは、ジャンプもそれ以外でも、技の完成度を高める方向で行ってほしいですね。
中野選手は「アクセル効果」で5.3〜5.6と、なかなかの高得点をもらいました。
・恩田美栄
そして、初日トップの恩田選手登場。今季の国際大会での活躍ぶりと、その確実性から、優勝はかたいかなーというところでした。
ところが、いざ滑りはじめてみると…。なんていうか、突出したものが感じられないんです。今までだったら、ジャンプの高さと確実性でぬきんでていたけど、今回、先に浅田選手や安藤選手などのジャンプの得意な選手が、難しいコンビネーションや3回転半、4回転とか、バンバン跳んできたじゃないですか。そうなると、恩田選手のジャンプが目立たなくなってしまうんですよね。もちろん、ほとんど決めてはいましたけど。表現の面も今季は良くなりましたが、まだまだ「曲を表現する」とか「なにかを伝える」というレベルまでは行ってないんですよね。
結局、後輩のジュニアの台頭で一番割を食ったのが、恩田選手だったのかもしれません。表示された得点はそこそこ高かったものの、ほとんどのジャッジに荒川選手より下の順位をつけられてしまいました。もちろん、総合ではトップに立ちましたが。
・村主章枝
そして、「女王」登場です。滑り出してすぐ、昨日とは違う、っていうのはわかりましたね。スピードが乗ってるし、なんか最初からオーラを感じました。そして、3ルッツ−2トウループは成功。調子の良くなかったフリップも降り、苦手のループもやや回転不足ながら着氷。ループが決まった瞬間、会場が沸きました。みんな、彼女はループが苦手って知ってるから。
そのあとはもう危なげなしでした。二度目のルッツは2回転になりましたが、それ以外はほとんどパーフェクトな出来で演技を終えました。
それに、やっぱり彼女の表現力は、すごいです。ジャンプをバンバン跳ぶジュニアはすごいけど、やっぱり総合力で観客を魅了してくれるんですよね。隣で見ていた、ほとんどスケートを見たことのない友人も、「すごくきれい〜」って言ってましたもん。やっぱり、今、世界に一番通用するのは彼女かなーと思いましたね。
得点が表示されて、技術点はさすがにあまり伸びなかったんですが、芸術点が5.8がずらーっと並んで、フリーは1位。村主選手が佐藤信夫コーチと抱きあって、泣きじゃくっているのが印象的でした。
・太田由希奈
そしてついに最終滑走者。ジュニアグランプリファイナル優勝で表現力が武器の太田選手は、その持ち味をいかんなく発揮してくれました。彼女の踊りは、本当にシニアのなかでもトップクラスでしょう。しかも、この日は苦手と思われていたジャンプも次々に成功させ、彼女の地元・京都ということもあって会場は沸きに沸きます。結局最後までミスらしいミスはなく、喝采のなか演技を終えました。
ただ、表示された得点はあまり高くなく、フリーだけでは4位、総合でも4位で会場からはブーイングが沸き起こりました。たしかにいい演技ではありました。ただ、技術点は多少低くても仕方ないとは思いましたね。やっぱり、ジャンプでは少し落ちるんです。あの村主選手だって技術点は抑えられてたし。でも、プレゼンのほうはもう少し出してもいいんでは、とは感じましたけど。私としては、恩田選手よりも印象度は上でしたね。
来季、彼女がシニアに上がったときが見物です。
【演技を終えて】
浅田真央選手が、カルガリー五輪のときの伊藤みどりさんみたい…と書きましたが、最終グループの演技を見てて、ふっとこう思いました。浅田選手が伊藤さんなら、ビット選手とトーマス選手が村主選手、恩田選手、荒川選手の3人で、地元のエリザベス・マンリー選手が太田由希奈選手かな〜と。いやはや、私のなかではあのカルガリーに匹敵するくらいの密度の濃い戦いでした。
→写真集その2 |